カリモクにはCOM(カスタムオーダーマイン)というシステムがあり、
チェアーの張地や木部の色を、ユーザー自身が選んで注文することができる。
さらにリクライナーでは初めて、木部の材質まで選べる「プレミアムオーダー」を可能にした。
今どきの家はフローリングが多い。床の色や雰囲気にあわせて
コーディネイトできるように考えた結果だ。
「使ってくれる人の顔や、使うシーンを思い浮かべて構想を練ります。
ザ・ファーストで言えば、そうだなあ、リタイアして自分の時間を楽しんでいる年配の方。
もちろん、若い方にも使ってほしいですが」
開発者のI氏は当時を思い返して目を細める。
ロンドンオリンピックに合わせて発売し、ゆったりとテレビ観戦してほしいという狙いもあった。
「日本人の生活には、日本人がつくったものがやっぱりふさわしいと思う。
ヨーロッパの家具はさすがだけど、メイド・イン・ジャパンは
細かい部分の気配りが違う。特にカリモク製はね。」
例えば脚部の裏側に、床に傷がつかないように
「ザグリ」と呼ばれる溝を設けてネジ山を隠し、さらにウレタンをつける。
こうした配慮は外国製品ではまず見られない。
「ザ・ファーストでは、回転の重さにもこだわったし、
見た目でも軽さを出したかった。日本の家に重くて仰々しいのは似合わない。
スッキリしたフォルムにしたくて、脚部のラインには特に時間をかけたかな。」
主役はインテリアそのものではなく、それを使う人だ。
カリモクがCOMを採用し、デザインの“仕上げ”を
ユーザーに委ねている理由はそこにある。
届けたいのは、その人の生活にしっくりと馴染み、
時間をかけて人生を豊かにする椅子。
「トレンドを追いかけるよりも、長く使えるものを目指す。
インテリアデザインはそうあるべきだと思う。」
ザ・ファーストは、機能と美しさを併せ持つ
まさに一生モノの一脚。オーナーと共に過ごす時間が、
その端正な佇まいにさらに磨きをかけていくのだ。