way to “THE FIRST”

Episode.2 操作レスのリクライニングを開発

つくっては、潰す。

「課題といえば、全部が課題でしたよね。」
飄々とした口調で語るのは、カリモクの製品開発担当、I氏。
ザ・ファーストの発案者だ。

ザ・ファースト ?当初は新型リクライナーと呼ばれていた? は、一切の操作なしで座と背、ヘッドレストまで最適な角度に変わる、かつてないリクライニングチェアー。
当然ながら、開発にあたって真似できる前例などどこにもない。
パーツが連動するしくみをゼロから考えるところからのスタートだった。
初めは段ボールを使って。

「段ボールの2次元模型を、いくつぐらいつくりましたかねぇ。
もう取っておいてもないですが。ここをこう動かすと…なんてやってね。
イケそうだと思ったらCADに落とし込むんですが」

模型で動きを検証し、CAD上で検証。強度などを全て試算した後に試作へと進む、このフローを繰り返した。
模型を何体つくったか、覚えていられないくらいの回数を。
前例のない製品だけに、あらゆるパーツや部品を一つ一つ新規開発することになる。
素材形状はもちろんのこと、メッキの種類まで様々に試してみなければならない。

「滑りはどうか(滑らかに動くか)、熱を持たないか、あと、軋み音が出でもいけない。」

試作に進んでも今度はカリモク流の、数えきれない厳しい検査項目が待っているのだ。
I氏の言葉を借りれば「つくっては検査で潰す」。
「新型リクライナーに関しては、特に厳しい基準でやったからね。最高峰を目指すわけだから。」

二重にしてスライドさせるという構造に行き着き実現の目途が立ったのが、新型リクライナー完成のつい1年前。
部品から考え完成状態まで作り上げたにも関わらず「ザ・ファーストになれなかった試作品」は、50体を超えた。

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